23Jan2021ペルセウスの溜息。涙の上にも朝は来る。そう、きみと僕の上にだって。Chapter.01:東京、ときどき大阪。1.東京、ときどき大阪。胸を裂くような夜が来たなら。抱き締めてあげたい、あなた。HUG HUG HUG2.東京、ときどき大阪。大阪出張から無事帰還して、けんいちはまたごく当たり前の日常を過ごしていた。大阪での仕事も上手いこと取り纏めることができ、上司もえらくご機嫌なのが見て取れた。大阪での仕事も上手いこと取り纏めることができHUG HUG HUG3.東京、ときどき大阪。件の上京組の地元の飲み会の日は、あれよあれよという間に訪れた。杉山が指名した場所はけんいちの会社からもほど近い繁華街。その日、20時過ぎまでの残業コースのところを19時には切り上げて退社した。外はすっHUG HUG HUG4.東京、ときどき大阪。さくらももこは、事務所名とさくらももこと入った名刺を差し出して微笑んでいる。よく手入れの行き届いたピカピカの爪に、フューシャピンクのロエベの名刺入れ。瞼の所で綺麗に切り揃えられた前髪に、肩の上で揺れるHUG HUG HUG5.東京、ときどき大阪。「さくらに会った。」そう告げた時の杉山の顔、目が点とはつまり今この顔。ああそう、と言い終えない内に、そいつはまだジョッキから口を離してもいないのに盛大に吹き出した。「何がおかしんだよ、おい泡飛ばすな。HUG HUG HUG6.東京、ときどき大阪。今度飲みに行こう。そう言ってももこが笑っていたあの日から、10日以上が過ぎていたが1度もけんいちの携帯は鳴らない。お互い仕事をしながらそんなに直ぐに予定が立つとは思っていなかったが、あんな風に再会したHUG HUG HUG7.東京、ときどき大阪。ももこと待ち合わせた駅ビルは平日の晩にも関わらず大賑わいだった。けんいちは同じ様に待ち合わせている人達を右から左に眺めた。刺すような風に横っ面を一撫でされて首を竦める。道行く人々の繋がれた手だったり抱HUG HUG HUGChapter.02:彼女の恋人。1.彼女の恋人。けんいちと食事をした晩の彼の顔が頭を離れなかった。驚き過ぎると人はきっとああいう顔をするのだ。許容範囲外、まさにそれだった。ももこは恋人の話をしたら驚くかな?なんて多少は色々想像していたけれど、あの日HUG HUG HUG2.彼女の恋人。翌日は刺す様な寒さだった。それは1度はマンションを出たももこが羽織っていたブルゾンを着替えに戻った程。裏地にダウンを施した少し厚手のコートは、今日のワンピースと合わせたい気分では無かったけれどそんなこHUG HUG HUG3.彼女の恋人。けんいちが連れて来てくれた場所はお洒落な大衆食堂という表現がぴったりだった。大衆的とお洒落が結び付かないももこだったが店内に入ってなるほど、と合点がいった。多分築年数の古い家屋を上手くリフォームして、HUG HUG HUG4.彼女の恋人。冬空で雨雲は中々憂鬱なものだ。今朝カーテンの隙間から覗き見た本日の天候は明らかな下り坂、これはきっと雪になるんだろうなと内心そこまで巡った所でようやく体を起こした。セミダブルのマットレスの左側にはまだHUG HUG HUG5.彼女の恋人。けんいちの乗っていたのは、真っ白なランドクルーザー。大柄なその車種を手慣れた様子で路肩に着けると、左側の窓を開け早く乗るよう促したけんいちから、ももこは目が離せなかった。細かいストライプの効いたネイビHUG HUG HUG6.彼女の恋人。「私、水炊きがあんなに美味しいって知らなかった。」胃の辺りを擦りながら、言葉に反して満面の笑みをももこは見せた。「満足頂けて、何よりです。」背広の内ポケットに財布を仕舞いながら、けんいちも心なしか嬉しHUG HUG HUGChapter.03:薄情者のラブレター。1.薄情者のラブレター。ももこの様相にけんいちが疑問を抱いたのは、思えばあの夜以降だったように思う。あの晩ちらちらと積もり始めた雪の中、ももこを自宅近くまで送り届けた後、 今日は本当にどうもありがとう、 と、メールを受信したHUG HUG HUG2.薄情者のラブレター。閃きの訪れた青年の黒目がちな眼差しが、くるくるとこちらを見つめている。そんな様にようやくけんいちは、彼が自身の同級生で彼女の恋人のたかしであることに行きたどり着いた。犬好きで小柄なたかし。当時喧嘩早かHUG HUG HUG3.薄情者のラブレター。ももこが実家に帰ったのは、12月26日の夜。もともと仕事納めは28日だが、土日を挟む為皆有休消化にその日をあて、事実上一般企業に比べたら2日程早い年末休暇となった。そういう個人的な融通が通用する当たりHUG HUG HUG4.薄情者のラブレター。「やっぱ地元が一番だな。」生ビールの中ジョッキを空にして、そう深く溜息を吐いたのは杉山。地元に帰って早々のけんいちに電話して来た彼は、早速飲みに行こうと誘い出し早ければまだ日も暮れない頃から(この時期HUG HUG HUG5.薄情者のラブレター。たかしとももこが合流する頃、埃(ちり)の様な雪が降った。ちらちらと音もなく落ちて、コートの繊維の隙間に溶けては消え溶けては消えを繰り返していた。傘を差す程でもなかったが溶けた水滴はとても冷たかった。そHUG HUG HUG6.薄情者のラブレター。コーヒーショップの自動ドアを抜けたら最後、たかしと過ごした凡そ2年の月日が流れて行く。たかしは自分のカップを空にしても尚ももこが飲み終えるまでは、とそこに居てくれたが実際は半分も飲み切れず、マキアートHUG HUG HUG7.薄情者のラブレター。たかしの背中を見送った後に頬を濡らした涙はしばらく止まることはなく、ももこはそこから動けずにいた。呼吸するたび胸は刺すような北風で溢れ、濡れそぼった目元が乾く気配は一向にない。大小さまざまな粒は俯くもHUG HUG HUGChapter.04:苦い二律背反。1.苦い二律背反。けんいちはすっかり出端を挫かれていた。地元での同窓会はある意味ひとつの覚悟を胸に挑んだものの、件の会合にはももこはおろかたかしすら現れなかったのだ。その会場で彼女の友人から「まるちゃん熱出しちゃったんHUG HUG HUG2.苦い二律背反。ももことたまえが待ち合わせたのは赤坂見附の改札口。昼間、たまえと電話した際にももこは思わず彼女を食事に誘ったのだ。自らの身辺の変化をたまえに聞いてもらいたくて、堪らず電話口の彼女を呼び止めると「うん、HUG HUG HUG3.苦い二律背反。お母さんになってたの。目の前でパスタを絡める親友の言葉は、思いの外彼女の期待の遥か先の出来事で、ただ瞬きするしかなかった。シナプスが繋がらない、そんな気分だった。「お母さんに、たまちゃんが?」「うん、HUG HUG HUG4.苦い二律背反。彼女と過ごした月日は確かにけんいちの体に染み付いている。付き合い始めはただ何となくに過ぎなかった彼女は、仲間内からの評価は絶大で女性特有の少しだけ起伏の激しい所、やや嫉妬(やきもち)やきな所全てはそのHUG HUG HUG5.苦い二律背反。目が冴えて一向に寝つけない。ももこはもう既に4度目の寝返りをうった。向いた先に転がる携帯のディスプレイを点けると午前1時38分、眩しいくらいのLED。決して起床時刻が遅いわけではない。稀に体がくたくたHUG HUG HUG6.苦い二律背反。瞬く間に訪れた土曜日、洗面所の前で少し跳ねた右側の髪の毛を指で2、3度梳いた。こんな日に限って髪の毛のコンディションは芳(かんば)しくない。指先を冷やしながら顔を洗い、土曜朝のローカル情報番組を流しなHUG HUG HUG7.苦い二律背反。二人を乗せた車が首都高用賀(ようが)を上がってから横浜町田まで本当に一瞬だった。そんな短い時間で彼は2度窓を開け煙草を吸っていた。ももこが吸う量増えた?、と尋ねればうんと曖昧に濁され、風に千切れていくHUG HUG HUG8.苦い二律背反。緑色の看板が見える、本当にあっという間に都内だ。ひと昔前の人間には考えられない位街と街は近付き、人と人は離れた。そして今、渦中のももこはけんいちの言葉を反芻させている。彼は何の話をしているのだろう。もHUG HUG HUGChapter.05:星を射る。1.星を射る。ふ、と目が覚めると新幹線は京都を過ぎた所だった。窓に切り取られた景色は、いつの間にか住宅地へと様変わりしていた。間もなく到着を知らせるアナウンスに隣前の乗客が網棚から荷物を下ろし始めたので、けんいちもHUG HUG HUG2.星を射る。翌日の関西もいい天気だった。ローカルの天気予報を点ければ今日の降水確率は10パーセント、昼間ならば上着が無くても過ごせそうだった。11階のホテルの窓からは白々としたビルに、既に昇った日射しが照り返してHUG HUG HUG3.星を射る。急遽大阪に行って来い、と上司に命じられたのは2日前。大阪で行われる大規模な展示会とその後の懇親会に出てほしい、とざくっと概要を伝えられたももこはただ頷くしかなかった。本来行く予定だったももこの先輩の奥HUG HUG HUG4.星を射る。突風が吹き抜けた向こうに何とも間の抜けた顔をした女、それがさくらももこだとけんいちが認識するまでにそう時間はかからなかった。「間抜け。」「え?」思わずけんいちが呟いた言葉に、顔を顰めて存外大きな声で聞HUG HUG HUG5.星を射る。星が生まれる瞬間、心音に似たシンパシーを発すると昔読んだ本にそうあった。左耳に強く押しあてられた左胸の鳴る音と、それはよく似ているのだろうか。そんな事を思い出す程、彼の胸は騒がしかった。再会した男女がHUG HUG HUGEndroll:それから。今日も自転を繰り返す星の上で、きみと手を繋ぐ。胸を裂くような夜、焼き切れてしまいそうな別れ。きみを巡るその全てを抱き締める。HUG HUG HUGHUG HUG HUG『ちびまる子ちゃん』の二次創作テキストサイトです。 大まるが主に好き。 一次創作(オリジナル)や『ごくせん(慎くみ)』も一部あります。 あくまで個人の趣味のサイトのため、原作者様・関係者様には一切関係ございません。 ここを見つけてくれた方が、楽しい瞬間を過ごしてくれたら幸いです。 いつも変わらない愛を、ありがとうございます。 motoi/☆★☆フォロー2021.01.23 15:001.東京、ときどき大阪。0コメント1000 / 1000投稿
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