ベットの中で抱き締めたのは多分、間違いなくあなた。
マルーン5の流れる六畳のマンションで、そう外は雨なんかが降っていて。
そう、あなたは「なんだ雨降ってるんじゃん」とか言ったりしてさ。
ちょっとだけ、嫌な顔をするんだけどまんざらそうでもないの。
あなたは枕に目一杯顔を埋めて苦しそうなんだけど、極めて規則正しい寝息をたてている。
髪、少し伸びたかな?なんて世界で一番近いところであなたの寝顔を眺めたり。
通った鼻筋とか、長い睫毛だとか、少し薄い唇なんかを誰より近くで眺める。
折角の休みなんだしどこか出かけない?なんて、私たち二人には愚問。
一緒に過ごして、目覚めたら決めたらいい。
何だか幸せでくすぐったい。
ああ、こんな気持ちなんて言うんだっけ?
会社のあなたは雨なんか気にしないし、休日の朝を私と迎えたりしない。
そもそもベットであなたが抱き締めるのはこの先、永遠にさくらさんだけ。
「城ヶ崎、こないだは出産祝いありがとな。さくら本当お前にはかなわない、って笑ってわ。」
「あら、まださくらさんなんて呼んでんの?」
「いや、大野が大野とは呼ばないだろ?」
「何言ってんの、名前で呼びなさいよ。」
まったくどんな天然チャンなのよ。
横恋慕なんてみっともない、私はあなたの大切な彼女も大切なの。
「じゃあ営業出てくるわ。」
「せいぜい頑張って来るのよ。」
あんな甘ちょろい男、だから言わないの。
そんな夢を見たなんて、誰にもいわない。
0コメント