太陽暦の恋

昔はみんな、子どもだった。



離れてみて、初めて気がついた。

極めて優秀に思われた、そんな彼の欠点。


大野けんいちという人間について考える。

小学校中学年の頃(これってどっちだろと未だに思う)彼は私のクラスの大将だった。

小学生特有のえばった奴!と、これがクラス替えすぐに受けた大野くんの印象。

女子のことを「おい」とか「てめえら」なんて言う人を、当時の私は酷く野蛮な事だと思っていた。

それに加えて昔からとにかくやんちゃなはまじやブー太郎、関口達も彼には逆らえずそれがより一層私を彼から遠ざけさせた。

極力目を合わさず言葉を交わさず、その1年はそうしてことなき終えようと思っていた。

そんな私の運命のエックスデイはあっさりやって来た。

席替えで私の目の前には大野くんが座り、その隣には大野くんと並ぶクラスのもう1人の将が収まったもんだからいよいよ私は学校が憂鬱になった。

間違いなくえばられてこき使われて、逆らったらぶたれるのだ。

今思えばいくら彼らでもそこまで理不尽ではないと思うのだが、当時の私の知識ではそれが精一杯だった。

だから遠く離れてしまった親友にも世界の終わりだと騒ぎたて、地獄だと喚き困らせた。

彼に対する私の評価は散々なもので、グループを組まされての活動なんて本当にもう苦痛を極めた。

案の定、私は「おい」「おまえ」と呼び捨てられ(時折まるこ)「20秒以内に箒取ってこねえとぶつ。」とかなんとか言われる始末。

私が万が一、登校拒否になったりしたら間違いなく大野くんのせいだ。

何て言い返す根性もない私は、今日もグループを組んだ隣に怯えているのだ。

そんな大野くんを私が特別格好良いと感じるはずもなかったが、彼はとにかく目立つのだとクラスの女子達の会話で初めて知ることとなる。

思えば体育では杉山くんと競っていつも一番、運動会も上級生を抜かして一番、昼休みのサッカーだって沢山ゴールを決めていた。

ちらっと見えたテストの点数も97点だった。

何よりきちんと見てみると大野くんはとても綺麗な作りをしていたのだ。

目も鼻も口も納まるべき所に納まっていた。

野獣だと思っていた彼は、実は王子様だったのだ。

そんな風にまじまじと眺める私が「おい、まるこ。何ガンくれてんだよ。やんのか?」と返されたことは言うまでもない。

大野くんは確かに乱暴者だったが女子には決して手を上げることはなかった。

寧ろ厄介事があると率先して仕切ってくれたり、B級男子の尻拭いも忘れなかった。

その上、硬派と謳われますます女子達は羨望の眼差しを向けた。

彼の絶対的な存在感に、気付かない人間なんていないのだ。


そんな大野くんが転校すると聞いたのは新学期が始まってすぐのことだった。

たまたまかぶった下校時間、私は初めて彼と2人きりになり彼も普通の少年なのだと思い知った。

杉山くんと離れてしまうことを嘆く小さな男の子を私はただ見つめることしかできないまま、そして彼と離れた。

それから何度か学年が変わり私も彼らも制服を纏うようになった。

少しずつ異性との距離も出来、杉山くんに対してももう昔の様な印象は受けない。


私は、時々思う。

もしも今の私で、彼に再会出来たとしたら何か変わるのだろうか。

月日が巡るたび、日に日に鮮やかに彼を思い出すのだ。

今や彼のいない世界なんて信じられない私。

いつか私の背中が曲がってしまって掌がしわくちゃになって、大野くんが小言を言うようになって白髪だらけになったとしても2人でいたい。


それはまだ、私が大野くんのことをそんな風に想うようになるずっとずっと昔の話。


HUG HUG HUG

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